乳がん
乳がんは日本人女性で最も発症者数の多いがんであり、生涯のうち9人に1人が罹患すると言われています。発症率は30代から徐々に増加し、40代後半から50代前半にピークを迎えます。日本における乳がんの罹患率は年々増加傾向にあり、30歳から64歳の女性においては、がんによる死亡原因のトップとなっています。死亡者数も増加傾向にあり、統計を取り始めた1958年と比較すると、2013年には約7.7倍の13,148人、2018年には約8倍の14,653人、2023年には15,629人もの方が乳がんで命を落とされています。
乳がんは、20代や85歳以上の方にも発症の可能性があり、決して油断はできません。どの年代においても、定期的なセルフチェックによる早期発見が重要です。
乳がんは乳腺に生じる悪性腫瘍です
乳房は皮膚、脂肪組織、そして乳腺組織で成り立ちます。乳がんは、この乳腺組織に発生する悪性腫瘍です。乳腺は、母乳を生成する小葉と、母乳を乳首まで運ぶ乳管から成り立っています。乳がんの発生原因は様々ですが、乳管や小葉の細胞ががん化し、異常に増殖することが主な特徴です。
乳がんには、初期段階の「非浸潤性乳がん」と、進行した「浸潤性乳がん」があります。非浸潤性乳がんは、がん細胞が乳管や小葉に留まっている状態を指します。一方、浸潤性乳がんは、がん細胞が乳管や小葉の壁を破って周囲組織に浸潤している状態を指します。
このような症状がある方は注意が必要です
乳がんの多くは、検診以外の場面では、ご自身が発見する「しこり」によって見つかります。乳房のわずかな変化に気づくことが早期発見に繋がるため、日々のセルフチェックが非常に重要です。しこり以外にも、乳房の皮膚にくぼみやひきつれ、変色が現れたり、乳頭に発生する乳がんでは、分泌物、変形、ただれが生じたりすることがあります。また、特殊なタイプの炎症性乳がんや乳腺炎を併発している場合には、痛みを感じることもあります。
- 乳頭がへこんでいる
- 乳頭から分泌物が出る
- 乳頭にただれ(びらん)や湿疹がある
- 乳房にしこりがある
- 乳房の皮膚にくぼみやひきつれ、または変色が見られる
乳がん発症の可能性が高い人
乳がんの発症リスクは、体質や生活習慣によって異なります。統計学的な調査により、乳がんになりやすい要因(リスクファクター)が明らかになっています。
以下に挙げるのは、乳がんの主なリスクファクターです。
- 過去に乳がんを患ったことのある方
- 長期間ホルモン補充療法を受けている方
- 乳がん経験のあるご家族(特に母親や姉妹)がいる方
- 初潮年齢が早く、閉経年齢が遅い方
- 出産経験のない方
- 閉経後に肥満体型の方
- アルコール摂取量の多い方
- 喫煙習慣のある方
これらの項目に該当するからといって、必ずしも乳がんを発症するわけではありません。しかし、該当される方は特に、ご自宅でのセルフチェックや乳がん検診を定期的に受け、早期発見に努めましょう。
乳がんに似ている疾患
乳房にできる「しこり」の80%~90%は良性腫瘍ですが、10~20%に乳がんが見つかります。そのため、しこりの原因を自己判断せず、乳腺科を早めに受診することが大切です。以下では、乳房にしこりができる主な疾患とその特徴を解説します。
乳腺炎
乳腺炎は、授乳期によく見られる炎症性疾患です。乳汁のうっ滞や、授乳中の乳頭の傷口からの細菌感染などが原因で発症します。乳房の腫れ、赤み、痛み、しこり、熱感などがよくある症状です。
乳腺線維腺腫
この疾患は10代から30代によく見られる、最も一般的な良性乳腺腫瘍です。しこりの大きさは小豆大から鶏卵大まで様々で、複数個が同時に発生することもあります。しこりはよく動き、クリクリとした触感があります。悪性腫瘍ではないと診断された場合、極端に大きくならなければ治療は必要なく、経過観察を行います。
葉状腫瘍
線維腺腫のひとつで、良性と悪性があります。主に20代から30代の方によく見られ、しこりは比較的動きやすく、クリクリとした感触があり、数ヶ月程度で急速に大きくなることがあるため、状況によっては切除治療が必要になることもあります。
乳腺症
乳腺症は、30代から40代の女性によく見られる乳腺の疾患です。女性ホルモンのバランスの乱れによって乳腺細胞に様々な変化が起こることが原因となり発症すると考えられています。しこりはゴリゴリとした感触で、境界がはっきりしないことが多いのが特徴です。月経前に乳房の痛みや張りを感じることもあります。
乳腺のう胞
乳腺のう胞は、乳腺症に伴ってよく見られる変化で、袋状の組織に分泌液が溜まることでしこりのように感じられます。大きくなると、のう胞内の感染や周囲組織が圧迫されることによって痛みを感じることがあります。
乳管内乳頭腫
乳管内乳頭腫は、30代後半から50歳代の女性によく見られる良性腫瘍です。乳頭付近に腫瘍が発生するのが特徴で、乳頭からは透明、黄色、あるいは血性の分泌物が見られることがあります。
自費の乳がん検診
自覚症状がない方も定期的に検査を受けましょう
日本の女性における乳がんによる死亡者数は年々増加しています。乳がんは年齢を問わず、若年層から高齢者まで罹患する可能性がありますが、早期発見と適切な治療を行うことで、比較的治しやすい疾患です。
乳がんの早期発見には、定期的な検査と自己検診が不可欠です。早期発見により、乳房温存手術など、より負担の少ない治療を選択できる可能性が高まります。検査方法は、マンモグラフィ検査や超音波検査などがあります。ご自身の健康のため、そして大切なご家族のためにも、自費の乳がん検診を積極的に受診しましょう。
検査は女性の乳腺認定技師が対応
当クリニックの自費の乳がん検診では、熟練の女性技師が乳腺超音波検査やマンモグラフィなどの検査を行っており、安心して受診して頂ける体制を整えております。さらに、乳腺科医が常勤しておりますので、検査後に必要な治療や追加検査が必要な場合もスムーズに対応可能です。
自費の乳がん検診の流れ
検査内容や順番は、当日の状況によって変更となる場合がございます。
1予約
当クリニックは予約制です。ご予約は、お電話またはWEBにてお願いします。また、ご来院時に直接ご予約頂くことも可能ですので、お気軽にお申し付けください。
2受付
初めて当クリニックを受診される方は、以下のものをお持ちください。
- 健康保険証
- 他の医療機関での検査結果(お持ちの場合)
再診の際は、以下のものをお持ちください。
- 健康保険証
- 診察券
初診の方は問診票の記入が必要なため、ご来院の際は時間に余裕をもってお越しください。
また診察時には、これまでの検査結果や現在の症状について詳しくお聞きします。心配なことやご不明なことがございましたら、遠慮なくご相談ください。
3検査
当クリニックでは、問診でお伺いした症状や状態に応じて以下のような検査を実施しています。
- マンモグラフィ検査
- 超音波検査
4診察・結果説明
当クリニックでは診察時に触診も実施し、検査結果は当日中にご説明します。
精密検査が必要と判断された場合には、その日のうちに受けて頂くか、後日改めてご予約をお取り頂くことが可能です。
費用
検査内容 | 費用 |
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マンモグラフィ +超音波検査 |
14,000円 |
マンモグラフィ | 14,000円 |
超音波検査 | 14,000円 |
注意事項
検診日は生理日と重ならないようにご注意ください。生理中の場合は、ご予約の変更をお願いします。
また、以下のいずれかに該当する方は、検査を受けられない場合がございますので、ご予約の際にお申し出ください。
- 授乳中の方
- 妊娠中、または妊娠の可能性がある方
- 豊胸手術、減胸術、乳房温存術、乳房切除術などの手術歴がある方
- ペースメーカーをご使用の方
- V-Pシャントをご使用の方
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。